2014年1月19日(日)11時36分配信 マイナビウーマンより転載。

マイナスイオン=イオン化した酸素って健康に良いの?

「酸化力が強いため殺菌効果がある」

ドライヤーから空気清浄機にまで使われているマイナスイオン。最近あまり見かけなくなったのはなぜか?

「マイナスイオン」の呼び名はあいまいで、何を指しているのか分からない。イオン化された空気には殺菌作用が認められるものの、発生量が少なすぎて効果がない製品も多い。

もし大量に発生させたら、室内で光化学スモッグを起こすようなものだから、健康とは対極の製品になってしまうのだ。

■バイ菌も人間もやっつけろ!

マイナスイオンの前に、まずはイオンを説明しよう。物質をこれ以上細かくできない状態に分解すると、酸素や水素、鉄やリチウムなどの元素になることはご存じだろう。ほとんどの元素は自然界では電気的に中立な状態を保っている。

ところが、なにかの拍子に電子が増減すると、バランスが崩れてしまう。電子はマイナスの成分なので増えればマイナスに、減ればプラスに偏る。この状態がイオンで、プラスなら陽イオン、マイナスは陰イオンと呼ぶのが一般的だ。

マイナスイオンは陰イオンの意味と推測できるが、なにのイオンか不明なので効果も当然わからない。言葉通り解釈すれば「マイナスは健康に良い」と言っているに過ぎず、名前からしてあいまい過ぎる。

家電で指すマイナスイオンは「陰イオン化した空気」で、おもに酸素を指している。高い電圧を作り出し、空気中に放電することによって、酸素などに無理やり電子を押し付ける構造が一般的だ。電子を受け取った酸素などはマイナスに偏るので、マイナスイオンと呼ばれる物質の完成だ。

あまりに非科学的な名称なので、大気イオンと呼ぶことにしよう。

大気イオンは健康に良いのか? 答えは吸い込むとNo、間接的に使うならYesだ。イオン化した酸素は酸化力が強いため殺菌効果がある。そのためカビを防ぐ/病原菌をやっつける可能性はあるのだが、同時に人体にも悪影響を及ぼす。

大手家電メーカーの資料によると、人体に与える影響と、1立方cm当たりの空気に含まれるイオン数は、

・皮膚に刺激を感じるレベル … 約100万個

・肺や遺伝子に悪影響を与えるレベル … 約700万個

・目に刺激を感じるレベル … 約1,300万個

なので、大量発生させるとバイ菌どころか自分までやっつけてしまう可能性・大なのだ。

■室内で光化学スモッグ!

高濃度の大気イオンも危険だが、マイナスイオン発生装置はさらに有害な光化学スモッグの源を生み出す可能性もある。オゾンや窒素酸化物だ。

呼吸に必要な酸素はO2なのに対し、オゾンは3つの酸素原子から作られるO3を指す。地球を紫外線から守るオゾン層もこのO3で、強い酸化作用があり決して健康的な物質ではない。ところが、粗悪なマイナスイオン発生装置は、わずかながらでもオゾンを作り出してしまうのだ。

同様にNOxの名で知られる窒素酸化物も発生しやすく、これはクルマの排気ガスを作り出すのに等しい。どちらも、夏に交通量の多いエリアで発生しやすい「光化学スモッグ」の原料だから、わざわざ部屋の空気を汚すのに等しい。

さらに粗悪な製品では、充分な効果が得られるほど大気イオンが発生していないものもある。あまりにも効果がないので、公正取引委員会から排除命令が出された製品も少なくない。大量発生も困りものだが、効果がないインチキ商品も、残念ながら少なくないのだ。

■まとめ

・マイナスイオンの呼び名は、あまりにも非科学的

・陰イオン化された大気、特に酸素には殺菌効果がある

・高濃度になると、大気イオンは健康を害する

・効果なしのインチキ商品も多数ある…

なので、健康的とは言い難く、倉庫や押し入れの殺菌/カビ防止に使うのが良さそうだ。

ただし酸化作用は人体に限らず、紙や衣類にもダメージを与えるので、あらたな問題が発生しないと良いのだが。

(関口 寿/ガリレオワークス)

     
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